丈夫に作られたカヤックも手入れを怠ったり、誤った方法で保管したりすれば長持ちしません。
労いは必要です。
フレームの手入れ
- 使用後フレームが濡れていたら、分解後濡れたままバッグに収めるのではなく(特に海水の場合)、タオルなどで水分を拭き取ってからバッグに収納してください。
- 海水で使用した場合は、帰ってから必ず真水で洗ってください。
- 真水で洗った後は水分を拭き取り、しっかり乾かします。
- その後、毎回でなくて良いので、スプリングボタンやフレームの繋ぎの部分に金属の保護潤滑剤を塗布(スプレー)してください。
保護潤滑剤はKURE CRC 6-66マリーン用がお薦めです。
フレームの間に砂が挟まると大きなトラブルの元となります。粘度の高い油脂は砂が付着しやすいので、グリースなどの使用はお薦めしません。
船体布の手入れ
Delphina(Alpina)の船体布は吸水性がなく、乾きやすいのが大きな利点です。タオルなどで拭き取り、少し置いておけば概ね乾いてしまいます。また、スターン側はジッパーで大きく開くので、洗いやすく、また内部も乾きやすくて便利です。
使い終わった後、現場ですること
- 分解する前にボトム面(ハル)を上に向けて逆さまに置き、水分や付着した砂をタオルで拭き取ります。
- そのまましばらく置いておけばボトム面は概ね乾くので、その間に他の片付けなどしながら、頃合いを見計らって表に向けます。
- 分解する前に船体内に溜まっている水分をタオルやスポンジなどで極力吸い取ります。
- デッキ面の水分も分解する前にタオルで拭き取ります。
- フレームを抜いたら、スターンのジッパーを大きく開いた状態にしてバウをの方を持ち上げます。
- 内部に残っていた水分がスターンの方に集まったら、タオルで水分と砂などを拭き取ります。
- できるだけタオルで水分と砂などを拭き取ったら、しばらく放置して乾かします。
- しっかり拭き取っていれば概ね乾き、水が滴るほどに濡れた状態のままということはないので、頃合いを見計らってたたみます。
帰ってからすること
生地よりもジッパーのケアが大切です。
海水で使用したら船体布は必ず真水で洗ってください。これを怠るとジッパーが塩分で固着します。
- ジッパーは真水でしっかり洗い、塩分が残らないようにしてください。
- 乾いたら、ジッパーにはKURE CRC 6-66マリーンやシリコン系の保護潤滑剤などをスプレーしてください。
- フレーム同様、粘度の高い保護油は砂を噛む原因になるのでお薦めしません。
保管方法
分解した状態
フレームも船体布(特にジッパー部分)もしっかり乾いていて塩分が残っていないことが最も重要です。
- 湿度や保管場所の環境にもよりますが、長期間バッグの中にしまったままにしておくと結露が発生し、カビが発生する原因になります。
- どんなにしっかり洗ったつもりでも、保護潤滑剤をスプレーしておいても、長期間しまったままにしておくと、ジッパーが固着することがあります。
海水での使用が多い人は、保管状況に関わらず2〜3ヶ月に一度は船体布を広げ、ジッパーの点検をすることをお薦めします。
カヤック本体のジッパーだけでなく、バックパックのジッパーも手入れを怠ると固着します。カヤックのジッパー同様、保護潤滑剤などをスプレーし、時折スライダーを動かし、状態を確認してください。
組み立てた状態での保管
- 一週間以上組み立てたままの状態にする場合は、フレームの固着を防ぐため、組み立てる前にフレームの継手部分やスプリングボタンなどにKURE CRC 6-66などをスプレーしてから組み立ててください。
- しばらく組み立てたままでも問題ありませんが、概ね2〜3ヶ月に一度は分解点検することをお薦めします。
- 空気の入ったスポンソンは気温の上昇によって膨張しますので、少し空気圧を抜いてください。
- 紫外線は船体布を傷めます。極力直射日光の当たらない場所での保管をお薦めします。
ジッパーが固着してしまった場合の対処
最初に試みること
ジッパーを固着させてしまったら、しばらく真水に浸けて塩分が溶けて復活させることを試みます。
それでも駄目な場合は、ドライヤーやヒートガンなどで温めると緩む場合もありますが、加減を間違えるとジッパーの歯が溶けてしまう場合もあるので、あまりお勧めはできません。
修理
基本的には、真水に浸けても治らない場合や壊れてしまった場合はジッパー交換となります。
しかし、心配は要りません。日本(京都の笠置)で作っているカヤックです。製作した工房で、比較的短期間でジッパー交換が可能です。これは国産ならでは安心感です。
フィールドでジッパーが壊れて船体布を閉じられなくなってしまった場合の対処法
Delphina(Alpina)のスターンには、バンジーコードとデッキメッシュを留めるためのウェビングループが片側4箇所付いていますので、これを利用します。
- まずスポンソンの空気を抜きます。
- ジッパー部分はベルクロ留めのカバーがありますが、このカバーをベルクロで留めて閉じます。
- ループに細いロープを通し(ロープが別途必要)、靴紐を縛る要領でロープを縛ればデッキが開いてしまうのを防げます。
- 縛り終わったらバンジーコードを戻し、通常より若干弱めに加減してスポンソンに空気を入れます。
もちろん完璧ではありませんが、これで十分パドリングできる状態にはなります。