Cetus オリジナル海旅用カヤック Delphina
Cetusは、長年カナダのフォールディングカヤックメーカーのFeathercraftを専門的に扱ってきたのですが、2017年にFeathercraftは突然生産を終了してしまいました。
そこで、Cetusは老舗カヤックメーカー フジタカヌーのALPINA-1をベースにしたカスタムモデルの海旅用フォールディング シーカヤックを2018年にプロデュースしました。
それがDelphinaです。

自分の経験を通して得た知識とアイディアを盛り込み、ツーリング用フォールディング シーカヤックとして使いやすいように仕立て上げました。
基本性能
最初に、艤装や装備品などを除いた、このカヤックの 舟としての基本的な性能について説明します。
一言で表せば、ベースのAlpina-1はとにかくクセのないカヤックです。
- 曲がりやすく曲がってしまいにくい
- 思っているのとは違う方向に勝手にズンズン進んでしまうわけではなく、クルクル回ってしまうわけでもない。
- 初期安定性が高いけど滑らかに傾けられる
- 静止している最中にどちらかに傾いてしまうようなことはなく、かといって傾けることができないようなわけでもなく、傾けている最中に極端な挙動を示すポイントもない。
- 必要十分なスピードと軽い漕ぎ心地
- 最高速が凄く速いわけではないけどパドリングタッチは軽く、十分なスピードを安定して維持できる。
- どんなコンディションでも安定した性能
- 「静水では凄く速いけど荒れた状況には弱い」「非常に苦手な風向きがある」などのような得手不得手やクセが非常に少なく、どんな状況でも安定した操作感や乗り心地が得られる。
- 硬くもなく柔らかすぎることもない船体
- スキンカヤックならではの柔軟性も感じられるが、フォールディングカヤックとしては剛性感が高い部類。リジッドのカヤックに慣れている人にも比較的違和感を感じることが少ないような乗り心地。
初心者から経験豊富な人まで、ストレスなく長距離を快適にパドリングできるカヤックです。
そして、フォールディングカヤックとして非常に重要な 軽い・ 丈夫・ 組み立て分解と撤収が容易の三拍子もしっかり揃っています。
Spec. 価格
Delphinaを創った当初は全長が445cmのALPINA-1 450のみだったのですが、その後に480cmのALPINA-1 480が誕生し、現在450がベースのDelphina Sと480がベースのDelphina L、2種類のサイズがあります。
Delfina S | Delfina L | |
Length | 445cm | 480cm |
Beam | 62cm | 62cm |
Weight | 15.5kg | 16.5kg(ラダー無し) |
Pack Size | 100 x 37 x 30cm | 100 x 37 x 30cm |
価格 | 357,000円(消費税込) | 390,000円(消費税込) |
価格(ラダー付き) | N/A | 437,000円(消費税込) |
※ Delphina Sにラダー付きはありません。
記載の価格には、「商品をお送りする場合は送料」、「房総へお引き取りにお越しいただく場合は実際にフィールド(海)にて取扱のご説明やパドリングのレクチャー(ショートツーリングに出て)など」が含まれます。
船形
全体像
先端が尖り、バランスの良い曲線を描く美しい輪郭です。




ハル(ボトム)の形状

「極端なハードチャイン」「極端なVボトム」、極端にフラットな面と直立した面で構成される「U時溝のような形状」「断面がほぼ半円」の何れにも該当しない滑らかな形状のボトムです。
また、Feathercraftのようにくっきりとスポンソンが張り出し、はっきりとしたチャンネルが形成されるようなデザインでもありません。
中心付近は十分な安定性を得られる幅のフラットに近い形状(フラットボトムではありません)で、そこから滑らかな曲線を描きながらガンネルへと立ち上がり、前後両端へ行くに従い徐々にVが強くなって行くデザインです。
ロッカー(前後方向の反り)は、クルクル回ってしまうようなハードロッカーでもなければ、曲がるのが困難な「ほぼロッカーなしの直線」でもありません。
全てが滑らかで穏やかでクセのないデザインです。それが直進性と回転性をバランス良く両立し、非常にコントロールをしやすくしています。
Feathercraftのスポンソンがくっきり張り出したデザインも利点は多々あるのですが、FRPコンポジットなどのリジッドカヤックに乗り慣れた人が少し違和感を感じる際の要素ともなってしました。
クセのない形状のハルデザインは、リジッドのカヤックの乗り心地に慣れた人にも馴染みやすいものだと思います。
フレーム
縦通フレーム
- 主要部分は、アルマイト処理(アルミ部材の表面に化学反応で特殊な皮膜を形成し、劣化を防ぐ防錆加工)をされた5154アルミ / マグネシウム合金のパイプ製です。5154は、5052の耐食性と6061の強度を兼ね備えた、フォールディングカヤックのフレームに最適な素材です。
- パイプの厚みは1.2mmで、キールは強度や耐久性を高めるためパイプを2重にしてあります。このパイプが2重になったキールフレームによって、大変剛性の高いしっかりしたフレームに仕上がっています。

デッキバーとサイブレイスバーは、シートワインディング製法によるファイバーグラスポール製です。ガラス繊維をエポキシで固めた非常に頑丈適度な弾性のある素材で、これによってデッキには滑らかで自然なカーブが形成されています。
リブフレーム
- Delphina Sのリブフレームは4枚で、縦通フレームと同じパイプでできています。
- Delphina Lはリブフレームが6枚になっています。2番3番4番5番のリブフレームはSと同様合金製のパイプですが、1番と6番(前後両端)は厚さ15mmのマリン合板製です。
- パイプ製のリブフレームは、はめ込み式のプラスチック製C型チャンネルによって縦通フレームに接合する仕組みで、装着は簡単です。
- この部分は結構ストレスがかかる部分なので、C型チャンネルは割れてしまうこともあります。しかし、組み立て前に現場で割れていることに気づいた場合でも、C型チャンネルの予備さえ持っていれば、その場で簡単に交換することができます。
- 割れてしまうことも見据え、Cetusのオリジナルリペアキット(Delphinaの標準付属品)には予備のC型チャンネルが3個含まれています。
- Feathercraftのリブフレームは、高密度ポリエチレンまたはポリカーボネイト製で、縦通フレームとの接合部分に独立したC型チャンネルのようなものはなく一体型です。一体型なので、一部が欠けてしまっただけでリブフレーム全体(結構高価)を交換しなければなりません。しかし、やはりここが割れたり欠けてしまう事例は少なくありません。C型チャンネルのみ交換できる仕組みは、大変合理的です。


パイプ製のリブフレームには、もう一つ利点があります。
プラスチックや木製のリブより 内側への出っ張りが少なく、滑らかで引っかかりにくいので、荷物の出し入れがしやすいことです。些細なことのようですが、結構実感はあります。
船体布
テトロン®
船体布の生地は塩化ビニル(PVC)系の防水加工が施されたテトロン®です。大変丈夫で耐久性が高く、防水性が高く乾きが速い素材です。使用後の手入れも簡単です。
- 身近な例では、店舗の店先のオーニングなどに使用されていることの多い素材です。毎日紫外線と風雨に晒されながら10年以上持つことも稀ではないことが頑丈さを証明しています。
- 防水加工はウレタンコーティングのように劣化(加水分解)が早くなく、耐久性が高いので、防水性能が長持ちします。
- テトロン®は濡れると0.5%縮み、乾くと元に戻る性質があります(その点では綿と似た性質を持っています)ので、使用中に船体布の張りが落ちてしまうことも、乾いたら縮んで組み立てが困難になってしまうようなこともありません。
ハル(ボトム)の生地
ハル(ボトム)には、デッキ用よりさらに強度を高められた生地(テトロン®)が使われています。
表面に硬度の高い0.15mmのフィルムを追加して耐摩耗性を高め、さらに防弾チョッキにも使用されているアラミド繊維を縦横ともに10本に1本の割合で編み込み、引き裂き強度が高められた生地です。
見た目はヘビーハイパロンのようなゴツさはありませんが、非常に強度が高く軽くしなやかで、アラミド繊維の補強によって、広範囲に裂けてしまうことのない生地です。
初期のFeathercraftのデッキには、表側は撥水加工を施し、裏側にに普通のウレタンコーティングを施したコーデュラナイロンが主に(一部ポリエステルもあり)使われていました。
撥水加工はあまり長持ちするものでありませんが、撥水スプレーなどで補うことは可能です。しかし、ウレタンコーティングは時間が経つと加水分解を起こし、正直に言ってあまり長持ちするものではありません。
防水・撥水加工が劣化すれば、防水性能が悪化するだけでなく、生地が吸水するようになってしまいます。
コーデュラナイロンは大変丈夫ですが、ナイロンは濡れると伸び、乾くと縮む性質があるため、防水・撥水加工が劣化した船体布は、乾いたら生地が縮み、濡れると弛んでしまいます。
そのため、少し船体布が古くなると、一旦濡らして生地を伸ばしてからでないと組み立てられなくなってしまったり、逆に使用中に船体布の張りが落ちてしまったりするようなことが起こりました。
後期のFeathercraftには、表裏両面に特別な方法でウレタンを含浸させたナイロン生地が使われていました。防水性が高いだけでなく、高い耐久性と防水加工により水を吸わないため、基盤はナイロンですが、生地の伸び縮みもあまりありませんでした。
しかし、普通のウレタンコーティングのようには劣化が激しくはなかったのですが、デッキ用の生地は長期間経過するとコーティングが剥がれてしまうものもあり(結構個体差がありました)、テトロン®のようなPVC系の生地ほどの耐久性はなかったようです。
そしてもう一つの大きな欠点があったのですが、非常にコストの高い生地だったことです。
経験上、乾くと縮んで濡れると伸びる生地より、テトロン®のように濡れると縮んで乾くと伸びる性質の方が、カヤックの船体布の生地として理に適っているのは確かだと思います。
船体布の補修はユーザー自身でも可能ですが、大きな修理が必要な場合などは、製造元のフジタカヌーへ修理を依頼することも可能です。
修理に際して、輸出入の手間と煩わしさと時間が不要で、コミュニケーションがとりやすく、臨機応変な対応が可能なことは、国内で製造しているメーカーならではの大きなアドバンテージの一つです。
「PVCは燃やすとダイオキシンを発生するから環境に悪い」と、PVCが悪者扱いされた時代がありました。そのため、PVCの使用をやめ、ウレタンコーティングなどに切り替えることが正義のように吹聴するアウトドア用品メーカー(特に北米の)も少なくありませんでした。
しかし、これは科学的に正しくありません。ダイオキシンの発生は、何を燃やすかではなく、焼却方法に起因します。
何を燃やしても焼却方法が適切でなければダイオキシンは発生します。低温で燃やすといかにも毒々しい匂いが出るからといった理由で悪者扱いするのは浅はかです。